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舎人公園野草園の生きものミニミニ図鑑 


 ジャコウアゲハの謎

2014年7月、野草園のウマノスズクサに初めてジャコウアゲハが飛来して卵を産みました。植えてからもう5〜6年、なぜ来ないのだろうと、首を長くして待っていましたから、みんな大喜び、大歓迎です。
それで、身近に観察していると、不思議なことがいろいろ。知らないことだらけです。
 
 ★初めての観察でよく分からないことばかりでした。2015年にまた来ることを期待して、今度はもっと目的意識を持って観察したいと思います。
その1  幼虫がウマノスズクサの茎を噛み切って食草を枯らしてしまう?  
 水元公園野草園のZAさんの話では、ジャコウアゲハの終齢幼虫は茎を噛み切って、その先の葉を枯らしてしまい、他の幼虫が食べられないようにするというのです。
 
 「食草を枯らすなんてそんな馬鹿な!」と半信半疑だったのですが、7/31には少し枯れていて、8/7にはかなりの部分が枯れています。この暑さですから水不足も考えられますが、Webで調べてみると、まんざら嘘ではないらしい。

★高校生の調査報告書 (埼玉県入間川河川敷におけるジャコウアゲハの個体数変動)

★保護して飼育している方のブログ 

 足立区生物園で蝶ボランティアをしている友人を介して尋ねてもらうと、確かに生物園でも下の茎を噛み切られて枯れているそうです。幸い生物園ではあちこちにあるし、オオバウマノスズクサやリュウキュウウマノスズクサも準備しているとか。

 仲間が食べる食草を枯らすなんてとんでもない話だと思いますが、「繁殖のし過ぎを予防する、強いものだけが生き残る」というのも、種の繁栄には重要なことなのでしょうか。

 さて、8/14には左の写真のように、もうほとんど全滅!「幼虫がわざと茎を切って枯らせたというよりは、葉を食べるように茎も食べてしまって枯れたと考える方が自然だ」とSさんは言います。確かにそうだけど、例えばおバカな幼虫が茎を食べて大事な食草が枯れた時があったとしても、そういう困った事態が続けば、幼虫も学習するのではないでしょうか?食草を枯らすなどという非常識な現象が続いてきたのは、やはり何らかの理由があってのことだと思います。あなたはどう思いますか? 
▲2014.8.7      ▼2014.8.714 
★結局、暑い夏の盛りの出来事なので、水不足で葉や茎を食べられたウマノスズクサが枯れやすいというのも十分考えれれるし、幼虫をこまめに観察して、確かに終齢幼虫が茎を食べているところを目撃するとか、こういう現象がどのくらいの頻度で(場所で)見られているのか等、もっと詳しい情報が必要のようです。また機会を見て、蝶好きの方や、自然に詳しい方たちにもお尋ねしてみたいと思います。 
 ▼2014.7.31 ★幼虫が茎を食べている写真を撮ってないか探してみると、ありました!  ▼2014.8.14
 ▼2014.8.21 もう葉はほとんど無くなって、茎しか食べるものがありません。体色は黒味が増しました。 
 ★Tumさんのご意見( 2014.8.18 ブログをご覧ください

 ジャコウアゲハの幼虫が意図的に枯らすような知能?本能があるとは考えにくく、また茎に毒が多いという報告も見当たりません。 《ブログ要旨》 ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサの毒(アリストロキア酸)が摂食刺激物質となるので、それを含む葉と茎を区別しないで食べる。だから意図してウマノスズクサを枯らすわけではなく、単に産卵が増え、幼虫数が増すと、食害が進行してウマノスズクサの地上部は枯れ、葉が少なくなれば、さらに茎を食べるので、いよいよ全部が枯れてしまうことになる。
 (私流に要約すると、こういうことかなと思います。)

その2  夏に茶褐色の幼虫が多いのは体温を上昇させにくくするため?  
 ジャコウアゲハの幼虫には黒と白の幼虫と、茶色と白の幼虫がいます。雄と雌の違いではと言う人たちもいましたが、Webで「ジャコウアゲハの幼虫の体色変化」で検索すると、中学2年生の興味深いレポートもありました。

 それによると「夏季には赤褐色の個体が結構頻繁に見うけられます。黒色の個体が発生する春や秋の生育環境と夏季の生育環境の違いは日長時間がながいこと、太陽光が強いことなどです。そして、なかでも夏は輻射熱が強いことに注目しました。輻射熱にあたった場合、黒色の個体と比べて赤褐色の個体の体温は上昇しにくい。そのため輻射熱によって、ジャコウアゲハの幼虫の体色に違いが生まれる。」という仮説をもとに実験を進めたそうです。
 
 残念ながらその結果報告までは紹介されてないので、詳しいことは分かりませんね。

 Tumさんの話では筑波大学の教授が体色の変化の研究をしたけれど、結局どういう理由であるかは解明できなかったそうです。

 ちなみに、下の写真は7/24に見た黒と白の幼虫。
 その後7/31と8/7に見たものは、茶色の濃い薄いはありますが、ほとんどが茶系と白の幼虫でした。右列3点

 生物園ではジャコウアゲハの幼虫を「オレオ」と呼んでいるそうです。「オレオ」とは黒いビスケットで白いクリームをサンドしたナビスコの製品名。笑ってしまいましたが、茶色の幼虫を見ることは少ないようです。
★体色の変化というのも、例えばバッタやカマキリの緑色と茶色の個体の違いは、生まれた場所の色によると言われていますが、それもまだまだきちんと分かっているわけでもないようです。ナミアゲハの蛹にも緑色と茶色がありますね。自然の中は不思議がいっぱい。分かってないことだらけ。それらを解明していくのは、専門の人たちの熱心な弛まぬ研究と長い年月が必要なのでしょうね。
 
★蝶の好きな友人に、その仲間の人たちの意見を聞いてもらったところ
 「殆どの人が幼虫が茎を齧るのを見ていたり知っていました。終齢幼虫ほど茎や硬い葉を食べるとのこと。そしてむしろ、茎を好んでというか、積極的食べるそうです。ただ、わざわざ根元のほうへ行って茎を食べるというより気ままに中間の部位や上のほうを食べたりしているのではないかという意見が多かったです。一連の行動の理由付けはもっともっと観察しても出しにくいのでは、というのがみんなの意見でした。
 また、幼虫の黒とか茶色とかは遺伝ではないかという意見でした。現に日差しの強いところでも黒い個体もいるし日差し弱いところでも茶色の個体もいるそうです。中には一部が黒かったり茶色かったりの斑の個体もいるそうです。」

 
 《 2014年9月15日 追記》
 『イモムシのふしぎ』(森昭彦、サイエンス・アイ新書)という本に、「幼虫の体表にはなんの痕跡もないのに『体内寄生種』がいると体色が淡くなるケースもある」という記述があり、その例としてジャコウアゲハのことが写真付きで出ていました。赤いのは寄生虫をもっている個体、黒いのが正常だそうです。
 
 私としては、すぐには信用しかねる話ですが、本になって出ているのだから本当の様な気もするし、それならもっと知られていてもいいような気もしました。でも、野外には赤茶色が多くて(夏だけ?)、生物園のように室内で飼育するものは黒が多いのは、寄生が少ないからと考えると、ピタリと当てはまりますね。

 舎人公園のスタッフが飼育展示していましたから、茶色の幼虫から蝶が生まれたかどうか聞いてみましたが、そういうことは気にしていなかったので分からないと言うことでした。来年はぜひ協力してもらって、赤茶色の幼虫がどうなっていくか、観察してみたいと思います。